金沢市の文化政策《金沢21世紀美術館》について
城下町「金沢」は、1546年金沢御堂と呼ばれる寺院が建立されてから御堂の中心に寺内町ができ、金沢のまちへと発展していきました。1580年に金沢御堂は織田信長の配下に攻め落とされ、この地に金沢城が築城され、1583年前田利家公が入城し、城下町「金沢」の基礎が築かれます。その後、290年間江戸時代を通して、金沢を居城として政治・経済・文化の拠点として発展してきた歴史があります。
金沢は戦災を受けなかったこともあり、当時の歴史的建造物やまちなみだけでなく、加賀友禅、加賀繍、九谷焼、金沢漆器、金沢箔など多くの伝統工芸品や能楽、邦楽などの伝統芸能、茶の湯が盛んであったことから多くの銘菓も誕生するなど食文化の発展も目を見張るものがあります。
歴史・文化的な背景もあり、金沢市の文化政策は多岐にわたっており、2010年には、第1回金沢・世界工芸トリエンナーレを開催。まちを歩いていても彫刻などの作品に目を奪われます。
金沢の21世紀美術館は、金沢大学の移転後の跡地の利活用を検討する中で誕生しました。すぐ近くに県立美術館があるにもかかわらず、「新しい文化の創造」と「新たなまちのにぎわいの創出」を目的に現代美術館の設置構想が持ち上がり、平成16年10月に開設されました。
現代美術館の設置構想に、当初は歴史や伝統にこだわっていくべきとの反対意見もあったようですが、「伝統とは単に過去の形式を踏襲するものではなく、革新の営みによって、新たな価値を創造するもの」との合意を形成していったとの事です。
21世紀美術館の建物は、妹島和世+西沢立衛/SANAAの設計で、建物そのものが数多くの賞を受賞しています。約2万7千㎡の敷地に、延床面積、約1万7千㎡。4か所の入り口があり、サークル状の形状をしております。円の直径は113m、高さ15m、外周350mです。建物内外周部は、入館料のいらないフリーゾーンが設置され、中心部が有料の展示スペースとなっています。常設展示は、入館料350円で時期によって行われている様々な展覧会ゾーンも同時に見ると共通券1000円の観覧料が必要となります。
21世紀美術館の金沢市における施策の位置づけとして、①金沢の都市の魅力を高め、世界に向かって文化を発信、②歴史性と現代性の対比を実現し、新たなまちづくりを推進、という方針があります。
以下の4つのコンセプトを掲げ、「まちに開かれた公園のような美術館」を目指し、出会いや体験の「場」を提供しています。
1.世界の「現在(いま)」とともに生きる美術館
2.まちに活き、市民とつくる、参画交流型の美術館
3.地域の伝統を未来につなげ、世界に開く美術館
4.子どもたちとともに、成長する美術館
開設時の平成17年度の来場者数は年間約130万人、平成20年からは約150万人を集客している状況に大変驚きました。市内小学4年生は、全員が来館して情操教育とマナー等の学習機会にもなっているようです。
平成24年度予算では、金沢市の財政負担は4.3億円となっておりますが、開設当初より、毎年の市への経済波及効果は100億を超えていることから、市民の皆様や議会の理解は得られているようです。(全体事業費:約200億円)
2014年には、金沢駅に新幹線も開通する予定となっていることから、来館者目標も180万人、そして200万人にも対応できる体制を作っていくことを課題に事業を推進しているとのお話でした。
さいたま市の中では、私の暮らす岩槻区が歴史と文化のまちとして位置づけられております。岩槻区では昨年度、まちづくり検討委員会によって「岩槻区まちづくりマスタープランの素案」を作成しました。岩槻区は、歴史、文化資産を最大限に活かしたまちづくりを推進していくとのフレームができています。
金沢市の事例は、文化政策が地域活性化に結びつき、子どもたちの教育を含め複合的に効果をあげておりました。今回、学んだことや感じたことを、今後の観光行政やまちづくりの視点で活かしていきたいと思います。
余談になりますが・・・6/1(金)〜6/3(日)には、第61回「加賀百万石まつり」が開催されるようです。詳細は、http://100mangoku.net/ まで。