さいたま市議会6月定例会が閉会!〜集団的自衛権に関する討論〜

本日、さいたま市議会6月定例会が閉会しました。当初の会期は7/4までの24日間でしたが、今定例会に大宮区役所移転のための埼玉県との財産交換に関する議案が提出されており、県と同時に議決をした方が良いとの判断から、会期を県議会の日程に合わせて7日間延長し31日間として本日が最終日となりました。大宮区役所移転のための財産交換議案が、県議会で可決されるかどうか心配されましたが、無事に可決されたので、さいたま市でも関連する議案の採決が行われ、全員異議なく可決されました。

また、総合政策委員会に付託された、共産党が紹介議員となって提出された、請願「憲法9条を守り海外で戦争する国になる集団的自衛権の行使容認に反対します」に対する討論・採決が行われました。

公明党からは、宮沢則之議員が討論に登壇。本請願を不採択するべき立場から討論を行いました。以下、討論の全文を紹介させていただきます。

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●公明党の討論(全文)

請願第10号について、委員長報告のとおり不採択とすることに賛成する立場から討論をおこないます。

本請願は、安倍首相が5月15日に安保法制懇報告書の提出を受けておこなった記者会見の内容にもとづいたものになっております。しかし、その後、11回にわたる与党協議を経て7月1日に、「国の存立をまっとうし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」という閣議決定がされました。

この閣議決定をよく読めば、請願第10号で言っているような「海外での武力行使に対する憲法上の歯止めをはずし、日本を『海外で戦争する国』にしようとするもの」という批判は、まったく筋違いであることは明白であります。以下、その理由を順次述べさせていただきます。

まず、今回の閣議決定では、その冒頭に「我が国は一貫して日本国憲法の下で平和国家として歩んできた。専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、非核三原則を守るとの基本方針を堅持しつつ、国民の営々とした努力により経済大国として栄え、安定して豊かな国民生活を築いてきた」とあり、さらに「こうした我が国の平和国家としての歩みは、国際社会において高い評価と尊敬を勝ち得てきており、これをより確固たるものにしなければならない」とあります。つまり、我が国が平和国家として歩み、そして専守防衛、非核三原則を守ってきたことを確認しつつ、今後もこれらを維持していくことが高らかに宣言されているわけです。

その大前提のうえで、「我が国を取り巻く安全保障環境は根本的に変容するとともにさらに変化し続け、我が国は複雑かつ重大な国家安全保障上の課題に直面している」との問題意識を述べ、そして「国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要な国内法制を速やかに整備することとする」と述べております。その安全保障法制の整備についての基本方針では、武力攻撃に至らない、いわゆるグレーゾーン事態への対処や国際社会の平和と安定への一層の貢献について順次記述されております。もちろん、これらは集団的自衛権とはなんら関係ありません。

そして、その後に「憲法第9条の下で許容される自衛の措置」として、本請願にかかわる記述がなされております。そこで、具体的にその記述を見てみますと、まず「従来の政府見解における憲法第9条の解釈の基本的な論理の枠内で、国民の命と平和な暮らしを守り抜くための論理的な帰結を導く」とあります。続いて、憲法第9条の下で許容される「武力の行使」については、「外国の武力攻撃によって国民の生命、自由、および幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として、必要な自衛の措置が容認される」という、従来の政府が一貫して表明してきた基本的な論理は「今後とも維持されなければならない」としております。つまり、これまでの政府解釈や憲法解釈の論理は維持することを明記しているわけです。

そのうえで、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃であっても、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るためにほかに適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許容されると考えるべきである」という、いわゆる自衛権発動の新3要件が示されました。ここでいう「武力の行使」には、「他国に対する武力攻撃を契機とするものが含まれるが、憲法上はあくまでも我が国の存立を全うし、国民を守るため、すなわち我が国を防衛するためのやむをえない自衛の措置」であるとされております。

こうした自衛の措置は、「国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある」と記述されております。ここが、今回の閣議決定で集団的自衛権を許容したとされる根拠となる部分であり、核心部分であります。しかし、この表現を素直に読めば、集団的自衛権を丸ごと認めたものではないことは明らかです。つまり、一般的にいわれている集団的自衛権がすべて許容されるというものではなく、形の上では「他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とするもの」であっても、あくまでも我が国を守る自国防衛のためのものしか許容されない、他国防衛のために海外で戦争することは許容されない、という個別的自衛権にきわめて近いものになっております。ただ、国際法上、個別的自衛権か集団的自衛権かいずれかの二者択一で分けるとすれば、集団的自衛権として分類されるものにならざるをえない、というわけです。

このように、自国防衛のみが許容され、他国防衛は許容されない、ということは、閣議決定の冒頭で「専守防衛に徹する」という記述とも合致しております。ですから、あくまでも専守防衛は維持し、なおかつ他国防衛は許容されない、まして自衛隊の海外派兵は認められないものとなっているわけであり、憲法第9条を破壊するものではなく、さらに「海外で戦争する国」になるわけでもありません。ところが、こうした論理構成を無視し、あたかも集団的自衛権の概念に含まれるすべての武力行使が今回の閣議決定で許容されたかのごとく誤解し、「日本が海外で戦争する国になる」という批判は、まったく的外れであると言わざるを得ません。

また、今回の安全保障に関する閣議決定に対して、一部の人たちは「立憲主義を破壊するものだ」という批判をしておりますが、これもまた的はずれな批判です。なぜなら、今回の閣議決定は憲法第9条を政権の恣意的解釈によって改憲に匹敵するような解釈改憲をしたものではなく、第9条の規範性を尊重し維持しながら、その枠組みのなかで自衛の措置について許容される限界が自国防衛であり、他国防衛は許されないという、解釈の再整理をおこなったものだからです。その上で憲法第65条には「行政権は内閣に属する」とあり、安全保障という行政上の重要問題について憲法との論理的整合性を保ちつつ閣議決定をおこなうことは、憲法上許容された当然の行為です。

その閣議決定をおこなうに当たり、与党協議をおこなって意見を調整したことに対して、「密室協議」という批判の声がありますが、それも的はずれです。与党協議の内容は連日マスコミによって報道され、国民に明らかにされてきたわけですし、そもそも与党協議に野党を加えなければならない、という理屈は成り立ちません。いうまでもなく、閣議決定はあくまでも内閣の方針を示したものに過ぎず、国会で法律として整備されなければ、現実にはなんら法的効力を持ちません。

したがって今後は、国会で関連法案が審議されていくことになります。その国会審議のなかで、たとえば新3要件のなかの「明白な危険」についても、危険な事態の発生場所や事態の規模、我が国に戦火がおよぶ可能性や、国民がこうむる犠牲の重大性など、「明白な危険」の判断基準が明らかになっていくものと思われます。こうしたことを曇りなき眼できちんと見ていくならば、我が国は今後もこれまでと変わらずに憲法の平和主義が堅持されていくことが理解されるはずです。 以上の理由から、本請願を不採択とする委員長報告に賛成する討論とさせていただきます。

採決の結果、賛成(不採択)多数で決しました。採決態度は、自民・公明・民主・改革フォーラムは賛成。改革フォーラムは数人退席。無所属2名は賛成。共産党は反対(採択)でした。