公的年金の財政検証の結果が公表されました!
厚生労働省は、社会保障審議会の年金部会に公的年金財政検証の結果を公表しています。公的年金財政検証は、法律に基づき5年に1度、実施されます。経済状況や出生率などを踏まえて、公的年金財政や支給水準などを点検する制度のことです。
今回の財政検証では、約100年間の年金財政の状況について、経済成長率の指標を基に、中長期の経済成長率がプラス1.4%からマイナス0.4%までの8つのパターンで試算しています。高齢者や女性の社会進出が進み経済が順調に推移することを想定した5つのパターンでは、現役世代の平均年収の50%の所得水準を維持できることが示されています。一方で、経済が成長しないことを前提とした3つのパターンでは、約25年後に50%を割り込む試算となっています。
5年前の検証結果と比較してみると、現時点での所得代替率では、62.3%〜62.7%に0.4ポイント改善。29年後の所得代替率では、50.1%〜50.6%に0.5ポイント改善されています。
いうまでもなく公的年金は、老後の生活を支える大切な収入源です。これまで、「年金は危ない!」「年金は破たんする!」等、国民の不安を煽る政治家やマスコミ報道が多くありましたが、少なくとも2009年・2014年の財政検証では、2004年に政府が約束した所得代替率50%以上が確保できるとの結果が公表されていることから、誤った認識であったと反省してもらいたいと思います。
2013年に成立した社会保障制度改革のプログラム法には、年金制度改正の検討課題が示されていますが、今回の財政検証ではこの課題を踏まえて3つの制度改正を仮定した試算が行われています。
①保険料納付期間の延長
現行で最長40年間となっている納付期間を45年間に延長した場合、現行制度よりも6.5ポイント改善し、所得代替率は57.1%となる。任意でさらに2年延長し、受給開始を2年遅らせる場合には、所得代替率は68.2%に上がると試算されています。
②パート労働者への厚生年金運用拡大
週20時間以上働くパート労働者約220万人が厚生年金の運用拡大によって加入した場合、現行制度よりも0.5ポイント改善し、所得代替率は51.1%となる。年収70万円以上の労働者1200万人が新たに加入した場合では、6.9ポイント改善し、所得代替率は57.5%になると試算されています。
③「マクロ経済スライド」と呼ばれる年金額抑制策を強化した場合
物価上昇率が低い局面でもマクロ経済スライドを発動するような制度設計がなされた場合、後世代の給付水準の改善につながることが示されております。
※所得代替率:現役世代の手取り収入に対する給付水準のこと。
※マクロ経済スライド:経済情勢の変動に応じて給付水準を自動調整する仕組みのこと。発動した場合は、現役人口の減少分などを毎年度の年金額改定に反映させることで、賃金や物価上昇率よりも年金の増額幅を抑制します。
年金制度は、信頼性と継続性を確保することが大事であり、その為に必要な景気経済対策を進めることや課題を乗り越えるための政策を実行していくことで、安心して老後を迎えることができる制度となるように、努力を続けていくことが大事です。その意味でも、5年に1度実施される「公的年金の財政検証」が重要な役割を担っていると考えます。今後も、検証結果について注視していきたいと思います。