医療的ケア児とその家族の支援を急げ!

~保健福祉委員会の議案外質問~

 市内で重度の医療的ケア児を抱える保護者とその支援を行っている事業者から、本当に切実なお声を頂戴しました。医療的ケア児とその家族が、安心して暮らしていく為の支援が立ち遅れている現状を改めて実感しました。

 様々な制度の狭間で支援が置き去りとなっている現状を目の当たりにし、現場で起こっている現象と課題を整理し、実際に制度をつくっている国に届け、実態の伴った支援制度に改善していくことが、その声を聴いた私の重要な使命と感じたことから、質問のテーマとして取り上げました。

 吉田:医療技術の進歩で障害や疾患のある赤ちゃんの救命率が上がり、自宅で暮らすケア児は全国で2万人弱とされております。昨年の6月に医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律が成立し、9月より施行されています。ケア児や家族への支援を国と自治体の責務と定め、情報提供や相談支援の拠点となるセンター設置を促しているという現状があります。埼玉県では昨年の10月に医療的ケア児支援センター等あり方検討会が設置され、本年1月から3月にかけて実態調査を実施するなど、主にセンター設置の在り方、医療的ケア児とその家族の支援の在り方について検討が進められています。本市においてはどのような検討がなされているのかお伺いします。あわせて、今後の医療的ケア児とその家族の支援の方向性について確認をさせていただきたいと思います。

 A:本市における医療的ケア児とその家族の支援におきましては、さいたま市地域自立支援協議会というのもございまして、その中の子ども部会におきまして、関係機関、関係部署とともに検討を行っております。今年度は令和2年に実施いたしました医療的ケア児実態調査の結果を基に、医療的ケア児に関する相談支援の課題を整理いたしまして、医療的ケア児が利用できるサービス、相談窓口を体系的にまとめることとしております。なお、先ほど御指摘にございました埼玉県が設置を検討してございます医療的ケア児支援センターにつきましては、今のところ県から詳細が示されておりませんが、今後も県からの情報収集に努めるとともに、必要に応じまして、本市の相談機関との連携について意見交換を行ってまいりたいと考えております。

 吉田:次に、具体的な事例も含めてお聞きをしたいと思います。過日、市内に住む15歳の少女とお会いさせていただきました。脳死に近い状態で生まれまして、懸命な処置のかいあって一命をとりとめたものの、人工呼吸器をつけながら御両親と自宅で暮らしております。この少女のケアは、主に母親と仕事をしながら父親が交代で行っております。この少女が生きていくためには、毎日12回行う一連のケアが必要不可欠です。人工呼吸器の回路点検、膀胱を圧迫しておしっこを出す用手圧迫排尿、たんを出すためのマッサージ、カフアシスト、床ずれ防止のための体位変換、30分置きに行うたんの吸引などでございます。そのほかにも1日5回の経口管による栄養剤の食事、これは1回90分ほどかかります。週に1回の胃チューブの交換等々、目の回るような忙しさでケアは続きます。御両親はこうしたケアをヘルパーさん、作業療法士さん、訪問入浴さん等の手を借りて行っておりますが、睡眠時間は1日3時間から4時間となっているのが現状でございます。この御家族のように、常時介護が必要な方への手厚い支援が必要と考えております。そこで、ケアサービスの現状についてお伺いいたします。
 例えば障害福祉サービスとして、身体介護や家事援助に長時間入れば入るほど減算となってしまうことや、夜間のヘルパー重度訪問介護、運転できない御家族がケア児と一緒に移動する際、ヘルパーを利用できない現状など、当たり前の生活に必要なケアと現行サービスメニューとのギャップについての認識と、その対応状況についてお伺いさせていただきます。

 A:現在のケアサービスの状況につきましては、ただいま委員から御指摘がありましたように、御家族の負担ですとか、当然、医療機関さんの方の負担もかなりのものだとお伺いしております。また、担当するワーカーや本庁の相談員から具体的な内容を聞きますと、もう言葉にならないような切迫感やら、当然、ケアサービスの必要性が物すごくあることは、重々承知しているところでございます。そういう状況にあっても、現行の制度からいうと、報酬の問題や運用の問題がどうしても壁になってきていることも、当然認識しているところでございます。そのため、本市では支援のこの現状、実態を踏まえた報酬単価の設定につきまして、大都市会議を通じ、国に要望を行っているところでございます。

 吉田:大都市会議を通じて国に要望を上げているということでございますけれども、一番現状をよく分かってくださっているのは、この支援を行っているワーカーさんや、また御家族、またそういった声を耳にしている皆さん方だと思いますので、より具体的に要望をしていってもらいたい、このように要望しておきたいと思います。
 次に、病院に入院した場合の対応についてお聞きをしたいと思います。様々ケアをしていても、この少女が体調を崩した場合、病院に入院となります。入院に際して、御両親の付き添いが求められます。理由は、看護師が片時も離れず一連のケアを行うことが困難となるためです。ここで、大きな問題が発生をいたします。入院すると医療の範囲となることから、毎日サポートしてくれたヘルパーさんらの利用ができなくなってしまうのです。このため、御両親は36時間交代の泊まり込みで、この少女のケアに当たります。サポートを受けていても睡眠時間三、四時間という状況なのに、さらに過酷な状況に追い込まれてしまうということになってしまっております。医療的ケア児の家族への支援は、全くの置き去りとなってしまっている現状かと思います。入院中のヘルパー利用は医療と介護の二重のサービスではなく、この家族の日常、当たり前の暮らしに当たり前の必要な医療を提供するものだと、このように考えております。そこで、お伺いします。
1点目、こうした現状に対して、御両親から要望が届いておると思いますが、その対応状況等、支援の最前線に立つ担当課としての認識について伺います。
2点目、国からの返事では、入院中は医療機関が身辺の介護についても医療提供の義務があるという、こういったことになるかと思うんですが、医療機関の現場にヘルパーが入ることは認められないと、こういった返事が出ているというお話も聞いておりますが、この少女の状況を踏まえた対応について、病院の見解についてお伺いさせていただきます。

 A:御両親からの要望についてでございますが、平成29年4月に入院中のヘルパーの利用について御要望をいただいております。御要望に接しまして、本市といたしましても、入院中のヘルパー利用がどうにかできないものかという思いの中で、本件について国に問合せをいたしました。しかし、国からは、入院中においては、医療機関が身辺の介護についても医療として提供する義務があり、医療機関の現場にヘルパーが入ることは認められないとの回答であったことから、入院中のヘルパーの利用は認められない旨、御家族に対して御回答しているところでございます。

 A:病院の見解についてお答えいたします。委員から御質問いただきました少女に限らず、一般的に当院に入院された患者に対する医療的ケアにつきましては、原則として看護師が行っております。しかしながら、看護師が患者ケアを行うに当たり、一般的な手法に比べ個別性が高く、御家庭で日常的に行っている手法によることで、患者の負担が軽く受け入れやすくなると考えられる場合には、御家族に付き添っていただくこともあります。この少女の場合においては、御家族の希望により付き添っていただきながら、個別の特徴に合わせた看護や介護の情報提供をいただく必要があると考えております。

 吉田:お話は分かるんですけれども、そうしますと、入院した際の医療的ケアは病院が責任を持って行うということと理解しますけれども、親御さんとしては、在宅で御両親やヘルパーさんが行っているケアと同等のケアが病院でできるのかどうかというところが、非常に心配になるわけなんです。もちろん御両親が御希望をされて付き添いするということは、これは自分のお子さんだから心配だという思いから、そういったことになるかと思うんですけれども、実際に御両親がいなくて、病院のみでこのケアをやってくれとなったときに、病院として対応できるのかどうか確認をさせていただきたいと思います。

 A:医療機関といたしましては、医療的ケアについての技術、知識は、当然、病院看護師は身につけております。しかしながら、個別性や特殊性が高く、さらに高度な医療的ケアを頻回に行う必要がある場合については、患者へのよりよい医療提供という観点から、日常でのケアを維持していくことは重要であると考えております。そのため、御家族に付き添っていただき、介護ヘルパーや御家族が在宅で日常的に行っているケアの手法を看護師に御教示いただきながら、ケアを行っている状況でございます。

 吉田:答弁できるのはその範囲かとは思いますけれども、このような少女の医療的ケア児のケアというのは、今お話がありましたように、個別性や特殊性が高く、知識や技術があっても、実際のいわゆる医療現場では、家族の付き添いやケアが必要不可欠であるということなんだろうなと理解します。また、この少女のケアを看護師が行うとなれば、付きっきりになりまして、看護師不足の課題もあるように考えます。そうであるならば、御家族が要望しているように、入院中であってもヘルパーが利用できるような運用の改善をしていくべきと思います。こうした現状を一番よく分かっているのは、先ほども申しましたが、現場にいる皆様方お一人おひとりだと思っておりますので、医療的ケア児とその家族を支援する法律、これもいよいよ施行されておりますので、こうしたことを踏まえまして、国に対して「ヘルパー利用の運用ができるように、現場の実態を届けていただきたい。」と要望させていただきまして、質問を終わります。