文化力で地域、人を豊かに〜劇場法の成立〜
文化の力で地域も人も豊かに。これまで社会的な役割などを定める根拠法がなく、施設整備が進む反面、あまり活用されていないと指摘されていた全国の劇場や音楽ホールを活性化させるため、国と地方自治体の役割を明記した「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」が、今国会で成立しました。
300席以上の劇場や音楽ホールは全国で1893施設(文科省調査:2008年度)あり、施設の設置者は9割以上が地方自治体となっています。しかしながら、施設の稼働率は全国平均で57.9%と約6割に留まっています。また、施設の使い方として自主公演(企画〜制作のすべてを行う。)は非常に少なく、貸館公演(外部団体に場所を貸す。)が中心となっています。
劇場法では、劇場や音楽ホールなどを「文化芸術を継承し、創造し、及び発信する場」と位置付けており、国や地方自治体にも「この法律の目的を達成するため、必要な助言、情報の提供、財政上、金融上、及び税制上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとする。」など自主公演に積極的に取り組むよう明記しています。
また、実演芸術団体の活動拠点が大都市圏に集中していることから、地方では多彩な実演芸術に触れる機会が少ない現状があることから、同法では、劇場や音楽ホールを運営する団体や劇団などの実演芸術団体、行政、学校教育などが相互に連携・協力することも明記しています。
このほか、同法では劇場や音楽ホールなどの活性化に関する指針を国が作成するとしています。文化庁では、関係機関とのヒアリングを行って、年内を目途に指針を作成する方針です。
先般、さいたま市の市民生活委員会で文化庁、東京文化会館を訪問した折にも、劇場法の話題が出ておりました。施設整備の段階では、こうした指針がない中で、多くの地方自治体で設置が進められてきており、こうした施設は、設備の更新時期に来ているものが多くあり、費用も大きく発生する場合もあることから、施設整備の根拠法となる、劇場法の制定は歓迎しているとの声がある一方、今後の課題として、「施設を所有する地方自治体や管理運営にあたる指定管理者が、文化政策を推進していく人財を確保していくことの難しさや苦しい財政状況下での安定的な財源確保策をどうするか。」などが挙げられておりました。
これから、さいたま市においての文化政策の方向性など、しっかりと提言ができますよう先進事例を学ぶ等、調査研究して参ります。