地域包括ケアシステム構築のために 〜広島県・尾道市の取り組みを学ぶ〜

地域包括ケアシステム構築の為に、先進的な取り組みを行っている広島県・尾道市を訪問しました。広島県では、在宅高齢者を見守る「在宅高齢者等支援情報システム」と地域ケアの要となる地域包括支援センターをサポートしている推進センターの事業を学んで参りました。尾道市は、全国的に先進的な取り組みを行っておりますが、特に医療と介護の連携について学んで参りました。(2014年5月)

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1.在宅高齢者等支援情報システムについて

広島県では2014年度より、地上デジタル放送を活用した在宅高齢者の見守り支援を地元テレビ局と共同で実施しています。データー放送の双方向性を活用した取り組みで、高齢者がテレビの画面上で自分の健康状態を選びリモコンのボタンを押すと家族の携帯電話などにメールが送信されるシステムとなっています。また、様々な健康・医療情報を配信している先進的な取り組みです。

昨年度、県内の放送事業者を対象に、①医療健康情報の提供及び生活支援機能、②見守り・安否確認機能、③健康・生活状況の把握機能などを有する情報システムを補助対象として公募し、県が設置した選定委員会で公募に応じた2事業者から、株式会社中国放送を採択。県の補助額は、地域医療再生基金を活用してシステム開発費3000万円となっています。

具体的には、TVリモコンのDボタンを操作すると「生き生き地域サポート」のトップ画面が表示されます。自分の健康状態を表情で表す「笑顔」「普通」「沈み顔」の3つから1つを選んでもらう簡単な操作となっています。情報提供では、健康ニュース・健康づくり応援店・健康コラム・介護用品/リフォーム・あなたの街の診療所・健康管理の6つのカテゴリーから、健康・医療に関する様々なデーターが取り出せるようになっています。

現在、単身・夫婦のみ世帯が増加しております。今後、急速に進捗する高齢化に伴って、「在宅のご高齢者をどのように見守っていくのか?」が大きな課題となっております。在宅のご高齢者を守るために、見守りシステムの構築は必要不可欠です。今後も、調査・研究を進めて具体的な政策提案をしていきたいと考えています。

 

2.広島県地域包括ケア推進センターの設置について

広島県では125の日常生活圏域ごとに、地域の実態に即した125通りのシステムを構築することを目指しています。同センターは、2012年6月に設置され、公益財団法人「広島県地域保健医療推進機構」が運営。市町が運営する地域包括支援センターの支援を実施しています。

多職種連携の推進、地域包括支援センターの機能強化、地域リハビリテーションの推進について、設立以降の事業ステップについてヒアリングを実施しました。カテゴリー毎にしっかりと課題が整理されており、解決へ向けて事業内容が有機的に実施されていました。

多職種連携の推進では、合同研修、チームケア研修、チームケア推進モデル事業の実施。センターの機能強化では、地域ケア会議研修、現地研修、地域ケア会議運営支援の実施等。地域リハビリテーションの推進では、広域支援センター機能整理、連携モデル事業の実施など具体的な活動として展開されています。

高齢になっても住み慣れた地域で、いつまでも元気に暮らしていくためには、介護状態=施設への入所ではなく、在宅であっても施設入所と同じようなサービスを受けられる仕組みを構築していかなければなりません。課題を整理して、計画的な活動として展開されているので、今後の地域包括ケアシステムを構築するための参考となりました。

 

3.医療と介護の連携について(尾道方式)

尾道市が構築した包括的地域連携システムは、国の保健医療行政に大きな影響を与え、「尾道方式」として全国的なモデルとなっています。尾道市医師会が地域医療連携システムの構築に取り掛かったのは1994年であり、全国的にも先進的な取り組みがなされています。もともと入院のきっかけとなった疾病の治療を急性期病棟で終えた後も、最終的に適切な生活の場に落ち着くまで、体系的なサービスの流れをシステム的に整備して、ケアマネジメントしていく考え方がベースとなっています。患者本位を大原則に、急性期から回復期、生活期への転院時や在宅退院時など、長期継続ケアの各段階で計画的にケアカンファレンスを行い、多職種協働で医療と介護を効率的・包括的に提供できる体制を構築しているのが大きな特徴です。

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尾道市の高齢化率は32.5%、高齢独居率は13.3%と非常に高い数値となっている。急性期病院が3つ、回復期リハビリ病院が2つ、療養型病院・有床診療所が12カ所、開業医療機関が約110ケ所となっています。

急性期病院には、地域医療連携室が設置されており医療と介護の連携に大きな役割を担っており、特に、退院前ケアカンファレンスは、急性期病院から、在宅・施設・医療機関にわたって切れ目のない適切な医療・看護・福祉サービスが提供されるように医療職・介護職・社会福祉資源(社会福祉士・民生委員・医療福祉機器事業者)が協働できるように情報交換・情報共有の場として機能していました。

ケアカンファレンスの効果は、顔の見える連携を図ることで患者・家族の安心感が生まれること。在宅チームとの連携が図れると共に患者の理解が深まること。患者・家族の思いと医療・看護ケアの問題点とアセスメントを再確認できること。多職種とのコミュニケーションが図れることにより信頼関係を構築できることなどが挙げられます。

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今後、本市における地域包括ケアシステムの構築に向け、切れ目のないサービス提供体制のモデルとなる先進的な取り組みで、大変に参考になりました。