高齢者多機能福祉施設 ふきあげタウン 視察

5/10、鹿児島県日置市にある、医療法人誠心会グループの経営する「ふきあげタウン」を視察して参りました。高齢者の貧困問題が深刻化する中で、低所得者でも安心して入居できる高齢者向けの賃貸住宅として注目されている取り組みです。医療・介護・生活支援サービスを整えただけではなく、独自の取り組みとして家賃減免制度を設けていることで、生活保護の受給者や年金収入のみである低所得者の入居を可能にしているのが特徴です。

当施設は、1Fに、小規模多機能ホーム、グループホーム(2ユニット)、2・3Fに、サービス付き高齢者向け住宅50戸の構成となっています。同建物内に「訪問介護ステーション」と「訪問看護サテライトステーション」「NPOヘルパーステーション」が設置されています。さらに、経営主体である「ゆのもと記念病院」や「前原やすしクリニニック」が隣接していることによって、24時間の医療連携体制が整っております。

家賃減免制度は、所得に応じて7段階の料金体系として設定されています。月額48,000円の家賃は、国民年金のみの方など最大で全額減免されます。(生活保護受給者で24,200円に軽減される。)入居者は、家賃の他に食費や光熱費、寝具利用料など支払う仕組みであるが、家賃以外でかかる費用の合計は、48,000円が上限で、毎月65,000円の国民年金でも十分に生活できる環境が整っています。また、入居一時金も不要となっています。

この家賃減免制度を可能にしたのが「家賃減免審査委員会」の設置で、地域の社会福祉協議会会長や民生委員で構成されており、第三者機関として公平な審査機能を果していることです。国や地方自治体の助成は受けず、グループ経営の収益を原資として運営されております。

地域に貢献したいという前原理事長の熱い情熱の込められた施設は、ホテルのエントランスのようなロビーを始め、施設内の至るところに心遣いが感じられました。この件にについてお話を伺うと、「施設に親を入所させるということは、家族や親族は、快く思わない場合が多い。そうした方が、素敵な所に入所させてくれて、ありがとう!と言ってくださるような施設にしていきたい。」との心で、細部に至るデザインまで全て理事長が担当されたとのことでした。

この施設でお仕事をされている職員の方も、理事長の理念がしっかり伝わっており、入所されている高齢者の側に立って働かれている様子で、素晴らしいと感じました。共用スペースでは、入居者と職員の方が談笑されたり、クイズをされていたり、アットホームな雰囲気に溢れておりました。

現在、高齢者の貧困が深刻化しております。その中でも、住居問題は特に深刻となっております。低家賃で環境の整った公営住宅は入居倍率が高く(さいたま市の場合20%超)入居が難しい状況です。また、民間の賃貸住宅の場合、入居者の家賃滞納や孤独死を心配して低所得の高齢者の入居を敬遠する傾向もあります。こうした、低所得高齢者が安心して老後を迎えることができる住環境の確保が急がれます。

核家族化が進み、単身高齢者や夫婦のみ高齢者世帯は、今後ますます増加していきます。こうした高齢者の生活の場は、施設と住宅に大きく分けられますが、施設は常に満員状態で入所が困難となっています。そこで、第一の課題は住宅の整備です。

ハード面の住宅確保に向け、昨年10月より登録制度がスタートした「サービス付き高齢者向け住宅」を、民間事業者が参入しやすい誘導策を打ち出して、整備していくことが必要と考えています。

そして、ソフト面のサービスの提供を受ける場として「サービス付き高齢者向け住宅」が、地域の中で高齢者を支えあう仕組みの中で機能できるように、今後も調査研究を進めて参ります。